相模原市緑区で相続した不動産の売却 ―「場所によっては売れる」「場所によっては動かない」区の現実―

相模原市緑区で不動産を相続した方から、よく聞く言葉があります。
「緑区って広いけど、とりあえず土地はあるし、何とかなるんじゃないですか?」
確かに緑区は、
・相模原市で最も面積が広い
・自然が豊か
・戸建て・農地・山林・別荘的物件まで幅が広い
という特徴があります。
しかし一方で緑区は、
・市街地と山間部の差が極端
・売却できる不動産と、ほぼ動かない不動産が混在
・農地・山林・市街化調整区域が多い
・相続後に「どうしていいか分からず放置」されやすい
という理由から、相続不動産では判断を誤ると長期間“負動産化”しやすい区でもあります。
この記事では、相模原市緑区で相続した不動産を売却する際に、後悔しないための実務ポイントを、地域特性・査定・売却手順・税金・活用判断まで、文字多めで詳しく解説します。
第1部:相模原市緑区の地域特性と相続不動産市場の実態
緑区は一言で言うと、「同じ区内でも、不動産の性格がまったく別物」というエリアです。
■ 橋本駅周辺は“緑区の中で唯一、市街地として成立しているエリア”
橋本駅周辺は、
・JR横浜線・相模線・京王相模原線
・リニア中央新幹線神奈川県駅(予定)
・再開発エリア
という要素が重なり、緑区の中では別格の資産性を持つエリアです。
この周辺では、
・築古戸建て
・古いアパート
・小規模ビル
であっても、立地評価が価格を押し上げるケースがあります。
相続不動産でも、「緑区だから安い」という判断は通用しません。
■ 城山・大島・田名寄りエリアは“郊外型住宅地”
橋本駅から離れた、
・城山
・大島
・原宿(城山側)
などのエリアは、
・戸建て中心
・車移動前提
・価格帯は比較的落ち着いている
という特徴があります。
相続後は、
・空き家化
・管理負担増
・売却に時間がかかる
というケースが多く、売却戦略を誤ると長期化しやすい地域です。
■ 津久井・藤野エリアは“農地・山林・別荘系相続が中心”
緑区の西部(津久井・藤野方面)は、
・農地
・山林
・古民家
・別荘的物件
が多く、一般的な住宅売却とはまったく別の世界になります。
このエリアでは、
・需要が極めて限定的
・売却まで数年単位
・売れない前提で考える必要がある
ケースも少なくありません。
第2部:緑区の相続不動産を正しく査定するためのポイント
緑区では、「土地がある=価値がある」ではありません。
■ まずは「市街化区域か、市街化調整区域か」の確認
緑区の相続不動産で最初に確認すべきなのが、
・市街化区域
・市街化調整区域
のどちらにあるか、です。
市街化調整区域の場合、
・原則建築不可
・再建築に厳しい制限
・買主が大幅に限定
されるため、価格は市街化区域とは別物になります。
■ 農地・山林は“宅地と同じ感覚で考えない”
緑区では、
・畑
・田
・山林
を相続するケースが非常に多く、
・農地法
・転用許可
・利用実態
が売却の可否を左右します。
特に農地は、「売りたいから売れる」ものではありません。
■ 建物価値はほぼ出ないケースが多い
緑区の築古戸建て・古民家は、
・耐震性
・間取り
・修繕コスト
の面から、建物価値が評価されないケースが大半です。
そのため、
・古家付き土地
・解体前提
としての判断が基本になります。
■ 接道・インフラ状況が価格を大きく左右
緑区では、
・道路幅が狭い
・未舗装道路
・上下水未整備
といったケースも珍しくありません。
これらは、
・住宅ローンが通らない
・建替えコストが高い
という理由で、価格を大きく押し下げる要因になります。
第3部:緑区で相続不動産を売却するための実務ステップ
緑区の相続不動産売却は、「早めに現実を把握すること」が何より重要です。
■ ステップ1:相続登記と権利関係の整理
相続登記が未了だと売却はできません。
緑区では、
・相続人が多い
・共有状態が長い
ケースも多く、ここで止まってしまうことがよくあります。
■ ステップ2:土地種別・法規制の確認
・宅地か農地か
・市街化区域か調整区域か
・再建築の可否
これを確認しないまま動くと、「そもそも売れない」ことに後から気づくケースもあります。
■ ステップ3:売却か、処分か、保有かを整理
緑区では、
・売却できる不動産
・処分を検討すべき不動産
・維持するしかない不動産
がはっきり分かれます。
「全部売る」前提ではなく、1つずつ切り分けて考えることが重要です。
■ ステップ4:売却方法の選択
・一般仲介
橋本周辺・市街化区域の住宅向け。
・業者買取
築古・調整区域・早期整理向け。
・引取り・処分相談
農地・山林・売却困難物件。
緑区では、「売る」より「どう整理するか」がテーマになることも多いのが現実です。
第4部:緑区の相続不動産と税金・注意点
■ 空き家の3,000万円特別控除は限定的
緑区でも条件が合えば使えますが、
・市街化調整区域
・農地
・山林
では、適用できないケースも多いです。
■ 譲渡所得税より「維持コスト」の方が問題になることも
緑区の不動産では、
・固定資産税
・管理費
・草刈り
・倒木リスク
など、売却益より維持負担の方が重いというケースも珍しくありません。
■ 相続税評価と実勢価格の乖離
相続税評価は出ているが、
・実際には売れない
・売れても評価以下
という不動産も、緑区では現実的に存在します。
第5部:相模原市緑区で後悔しない判断基準
■ 早期に整理すべきケース
・市街化調整区域
・農地・山林
・管理が困難
・相続人が遠方
■ 売却・活用が可能なケース
・橋本駅周辺
・市街化区域
・接道・インフラ良好
・需要が見込める立地
■ 迷ったら3つの軸で考える
1.売れる可能性があるか
2.維持コストはどれくらいか
3.相続人に負担を残さないか
【まとめ】
緑区の相続不動産は「全部売れる前提」を捨てるところから始まる
相模原市緑区は、不動産の性格差が最も大きく、相続不動産の難易度が非常に高い区です。
後悔しないためには、
・早めに現実を把握する
・売却できるもの/できないものを分ける
・無理に高値を狙わない
・税金より“整理”を優先する
という視点が欠かせません。
「緑区の相続不動産は、整理すること自体が価値になる」
この考え方が、相続人全体を守る最大のポイントになります。
シェアする