鎌倉市で相続した不動産の売却 ―「鎌倉だから高く売れる」は、最も危険な思い込み―

鎌倉市で不動産を相続した方から、必ずと言っていいほど聞く言葉があります。
「鎌倉の不動産なんだから、価値は高いですよね?」
「場所はいいと思うので、焦らなくても大丈夫ですよね?」
確かに鎌倉市は、
・歴史と文化の街
・全国的な知名度とブランド力
・都心通勤圏+観光地
という、他の市にはない強力なイメージを持っています。
しかし現実の鎌倉市の相続不動産は、
・坂・階段・谷戸が非常に多い
・再建築不可・接道不良が多発
・風致地区・景観規制が厳しい
・築50年以上の戸建てが多い
・「住みたい人」と「買える人」が一致しない
という理由から、「高く売れる不動産」と「まったく動かない不動産」が極端に分かれる市でもあります。
この記事では、鎌倉市で相続した不動産を売却する際に、後悔しないための実務ポイントを、地域特性・査定・売却手順・税金・活用判断まで、文字多めで詳しく解説します。
第1部:鎌倉市の地域特性と相続不動産市場の現実
鎌倉市の最大の特徴は、「エリアごとの性格差が非常に大きい」という点です。
■ 鎌倉・由比ヶ浜・長谷は“鎌倉ブランドの中枢”
鎌倉駅周辺、由比ヶ浜、長谷エリアは、
・観光地としての知名度
・海・寺社・街並み
・都内富裕層・セカンドハウス需要
があり、条件が良ければ高値売却が成立するエリアです。
ただしこのエリアでも、
・谷戸
・階段敷地
・再建築不可
が絡むと、一気に売却難易度が跳ね上がります。
■ 大船は“実需型で現実的に売れるエリア”
大船エリアは、
・JR複数路線
・商業・生活利便性
・鎌倉市内で最も人口が多い
という特徴があり、鎌倉市の中では最も「普通に売れる」エリアです。
相続不動産の売却でも、
・ファミリー層
・実需購入者
が主な買主となり、価格とスピードのバランスが取りやすい地域です。
■ 西鎌倉・腰越・深沢は“見極めが必要な住宅地”
これらのエリアは、
・落ち着いた住宅街
・景観は良い
・駅距離・坂の影響が大きい
という特徴があります。
同じ町内でも、
・平坦地
・接道良好
かどうかで、売却できるか否かがはっきり分かれます。
■ 北鎌倉・山ノ内は“価値は高いが動きが遅い”
北鎌倉周辺は、
・風致地区
・自然・寺院
・高級住宅地イメージ
がある一方で、
・規制が非常に厳しい
・建替えが難しい
・買主が限定される
ため、売却には年単位の時間がかかることも珍しくありません。
第2部:鎌倉市の相続不動産を正しく査定するためのポイント
鎌倉市では、「場所がいい=高い」ではありません。
■ 建物価値はほぼ期待できないケースが多い
鎌倉市の相続不動産は、
・築50〜70年
・旧耐震
・現代ニーズに合わない間取り
という物件が多く、建物価値はほぼ評価されません。
重要なのは、
・古家付きで売るか
・解体前提で売るか
を最初から決めつけないことです。
■ 再建築可否・接道条件は最重要
鎌倉市では、
・建築基準法上の道路に接道していない
・私道だが持分がない
・セットバックができない
といった理由で、再建築不可の物件が非常に多いです。
これは、価格に致命的な影響を与えます。
■ 風致地区・景観規制は価格を二極化させる
鎌倉市特有の、
・風致地区
・景観条例
・高さ制限
・建ぺい率の厳格運用
は、
・価値を高める要素
・価値を下げる要素
の両面を持ちます。
「自由に建てられない」ことをデメリットと捉える買主も多く、売却スピードに大きく影響します。
■ 谷戸・斜面・擁壁は価格調整要因
鎌倉市では、
・谷戸地形
・擁壁
・階段のみのアプローチ
が珍しくありません。
これらは、
・住宅ローンが通りにくい
・建替えコストが読めない
という理由から、価格を大きく下げる要因になります。
第3部:鎌倉市で相続不動産を売却するための実務ステップ
鎌倉市の相続不動産売却は、「期待値を下げて、現実を正確に把握する」ことから始まります。
■ ステップ1:相続登記と共有関係の整理
相続登記が未了だと売却はできません。
鎌倉市では、
・兄弟姉妹共有
・相続後に長期間放置
というケースも非常に多いです。
■ ステップ2:法規制・再建築条件の徹底確認
・接道
・再建築可否
・風致地区
・景観条例
これを確認せずに売却すると、「買主が見つからない理由」が後から分かります。
■ ステップ3:売却か保有かを冷静に比較
鎌倉市では、
・観光・別荘利用
・賃貸活用
を考える方も多いですが、
・管理負担
・修繕費
・空室リスク
を考えると、売却の方が合理的なケースも多くあります。
■ ステップ4:売却方法の選択
・一般仲介
駅近・平坦地・条件良好物件向け。
・業者買取
再建築不可・坂・築古向け。
・長期販売前提
高値狙いだが時間を要するケース。
鎌倉市では、「早く売る」と「高く売る」の両立は難しいという前提が重要です。
第4部:鎌倉市の相続不動産と税金・注意点
■ 空き家の3,000万円特別控除は要件が厳しい
鎌倉市では、
・再建築不可
・市街化調整区域
・法規制による解体不可
が絡むと、特別控除が使えないケースもあります。
■ 譲渡所得税より「維持リスク」が問題になることも
鎌倉市の不動産は、
・固定資産税
・修繕費
・擁壁管理
・景観維持コスト
など、持っているだけでコストがかかるケースも少なくありません。
■ 相続税評価と実勢価格のズレ
「相続税評価は高いが、実際は売れない」というギャップが、鎌倉市では起きやすいです。
第5部:鎌倉市で後悔しない判断基準
■ 早期に整理すべきケース
・再建築不可
・坂・階段・谷戸
・管理が困難
・相続人が住まない
■ 売却・活用が可能なケース
・駅徒歩圏
・平坦地
・接道良好
・法規制を理解した買主が見込める
■ 迷ったら3つの軸で考える
1.本当に売れる現実性があるか
2.維持コストはいくらかかるか
3.次世代に負担を残さないか
【まとめ】
鎌倉市の相続不動産は「ブランド」に期待しすぎないことが最大の防御
鎌倉市は、イメージと現実のギャップが最も大きい市です。
後悔しないためには、
・ブランドに期待しすぎない
・法規制と地形を正しく理解する
・高値より現実的な整理を優先する
・税金より「負担を残さない」視点を持つ
ことが不可欠です。
「鎌倉の相続不動産は、冷静な現実把握が最大の価値」
この考え方が、相続人全体を守る最重要ポイントになります。
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