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相続知識

豊島区の地籍調査未実施問題:法務局の公図がアテにならない? 境界杭がない古い実家を安全に売却する「確定測量」の基本

1. 衝撃の事実:東京23区の地籍調査進捗率はわずか数パーセント


国が全国の土地を一筆ごとに正確に測量し、最新の地図(不動産登記法第14条地図)を作る「地籍調査(ちせきちょうさ)」。 地方の農村部や山林などでは調査が大幅に進んでいますが、実は東京都23区における地籍調査の進捗率は極めて低く、わずか数パーセント程度にとどまっています。豊島区も例外ではありません。


なぜ大都会の東京で測量が進まないのか。理由はシンプルで、「土地の価値が高すぎて利害関係が複雑すぎる」「住宅が密集しすぎていて塀や建物が境界線上に建っており、簡単に測量できない」からです。


その結果、豊島区(長崎、南長崎、要町、雑司が谷、上池袋など)の古い住宅地では、東京法務局 城北出張所に備え付けられている公図が、明治時代に作られた「字限図(あざきりず)」と呼ばれる精度の低い手書き図面のまま放置されているケースが珍しくありません。


現地を測ってみると、公図と土地の形状が傾いていたり、登記簿に書かれた面積(公簿面積)と実際の広さ(実測面積)が数坪〜十数坪も食い違っていたりする「縄伸び・縄縮み」が日常茶飯事なのです。



2. 境界標がない土地は「買い手がつかない・ローンが通らない」


昭和の時代であれば、「お隣とのブロック塀の真ん中が境界ということでいいよね」という曖昧なお互い様の感覚で土地の売買が成立していました。


しかし、現代の不動産取引において「境界未確定」の土地をそのまま一般市場で売ることはほぼ不可能です。


・買い手の住宅ローンが通らない


メガバンクや大手金融機関は、境界標がなくお隣との書面も交わされていない土地に対して、購入資金の住宅ローン融資を原則として承認しません。


・建売業者やハウスメーカーに買い叩かれる


プロのデベロッパーが買い取る場合でも、「境界紛争のリスク」「後から測量する費用」を見込まれるため、相場より数百万円単位で安く買い叩かれます。


・売却後の損害賠償リスク


境界を曖昧にしたまま売却し、後から「実は塀がお隣に20センチ越境していた」と判明した場合、売主は契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を問われ、裁判沙汰に発展します。


豊島区の実家を相場通りの適正価格で売却するためには、土地家屋調査士を雇って敷地のすべての角に境界杭を打ち込む「確定測量(かくていそくりょう)」を行うことが必須条件となります。



3. 確定測量を進める「2つのハードル」:官民査定と民民査定


確定測量を完了させるためには、敷地を取り囲むすべての人・行政と書面を交わす必要があります。



ハードル1:豊島区役所との「官民境界査定(かんみんきょうかいさてい)」


実家が接している道路が「区道」である場合、豊島区役所(土木管理課)の担当職員に現地へ立ち会ってもらい、公道と敷地との境界線を確定させます。豊島区役所の図面資料と照合しながら進めますが、申請から境界確定協議書の交付まで概ね1ヶ月〜2ヶ月を要します。



ハードル2:お隣の住人との「民民境界査定(みんみんきょうかいさてい)」


実務上、最もトラブルになりやすいのが、隣接する個人地主(左右・裏手の住人)との立ち会いと押印です。 土地家屋調査士が敷地の角に仮のポイントを打ち、お隣さんに現地へ来てもらって「ここがお互いの敷地の境目で間違いありませんね」と合意を取り、「筆界確認書(境界の合意書)」に実印を押してもらい、印鑑証明書を添付してもらいます。



4. お隣さんが印鑑を押してくれない時の対処法


豊島区の住宅街でよく起こるのが、「お隣さんと長年仲が悪く、立ち会いを拒否される」「お隣の土地が空き家で、所有者がどこにいるか分からない」「お隣の高齢者が認知症になっており、判断能力がない」という事態です。


お隣のハンコが1つでも欠けると、通常の確定測量は完了しません。その場合の打開策は以下の通りです。


・法務局の「筆界特定制度(ひっかいとくていせいど)」を使う


お隣がどうしてもハンコを押してくれない場合、東京法務局(城北出張所)に対して「筆界特定」の申請を行います。法務局の専門官が公図や過去の航空写真、周囲の測量データを科学的に分析し、「ここが法的な境界線である」と公的に認定してくれます。お隣の合意や押印がなくても、法的な境界を公証できる強力な制度です。


・不在者財産管理人の選任


お隣が空き家で行方不明の場合、家庭裁判所に申し立てて「不在者財産管理人」という代理人(弁護士など)を立ててもらい、その代理人と境界立ち会いを進めます。


・「境界非明示」でプロの買取業者へ売却する


どうしても時間がない、相続税の申告期限(10ヶ月)までに現金化したいという場合は、第176回でお伝えしたように、確定測量を自腹で行わず「現況有姿・境界非明示の条件」で現状のまま引き受けてくれる専門の買取業者へ手放すのも現実的な選択肢です。



5. 【実例】南長崎の敷地・公図と現地が大きく食い違っていた古い実家を、筆界特定で確定させ売却した事例


豊島区南長崎にある古い木造戸建て(登記簿上の公簿面積:28坪)を相続した長女のM様(50代・主婦)の事例です。


・課題


M様は実家を解体して土地として大手不動産会社に売却を依頼しました。 しかし、土地家屋調査士が現地を調査したところ、法務局の古い公図と現地のブロック塀の配置が大きく歪んでおり、お隣の敷地がM様側の敷地に約1.5メートル斜めに食い込んでいるような状態になっていました。 お隣の住人に立ち会いを求めたところ、「先代の頃からこの塀で暮らしてきた。今さら境界を変えられたりハンコを押したりするのは絶対に嫌だ」と感情的になり、交渉が完全に決裂してしまいました。


・プロの介入と解決


M様は当方へ駆け込まれました。私たちは泥沼の隣人トラブルを避けるため、個人間での直接交渉を取りやめ、法務局の「筆界特定制度」の利用を即座に決定しました。


東京法務局 城北出張所へ筆界特定の申請書を提出。 法務局の筆界調査委員が現地を詳細に測量し、大正時代の公図、近隣の確定測量図、過去の地積測量図を照合しました。 約8ヶ月の調査期間を経て、法務局から「公図の配置に歪み(錯誤)があったものであり、現地の古い水路跡と塀の基点が正しい筆界である」という正式な「筆界特定書」が交付されました。


・結果


法務局のお墨付きが出たことで、お隣の住人も法的な決定を受け入れざるを得なくなり、確定図面に基づいた境界標の設置が完了。 実測面積は28坪から「31坪」へと約3坪増え、大手ハウスメーカーの顧客へ「4,900万円」の満額で無事に売却が成立しました。 M様は「一時はお隣と裁判になるかと怯えていましたが、法務局の公的な制度を使って白黒をつけ、相場以上の価格で売却できて救われました」とおっしゃっていました。



6. 実家を売却・相続するなら「境界の確認」を今すぐ始める


豊島区のような都心の住宅密集地において、土地の境界線が数センチずれるだけで、資産価値は何十万円、何百万円も変動します。


確定測量には、官民査定や隣人との調整を含めて、順調に進んでも「3ヶ月〜4ヶ月」、筆界特定や隣人トラブルが絡むと「半年〜1年近く」の長い時間がかかります。 相続が発生してから慌てて動き出しても、納税期限(10ヶ月以内)や売買契約の引き渡し期日に間に合わなくなってしまいます。


実家の登記簿謄本とお手元の図面を確認し、「敷地の4隅に赤いプラスチック杭や金属プレートが入っているか」「法務局に地積測量図があるか」を今すぐチェックしてください。 境界標が見当たらない場合は、売却や相続を本格化させる前の段階で、豊島区の土地に詳しい土地家屋調査士や不動産コンサルタントへ早めに測量の相談を入れておくことが、最大の資産防衛策となります。

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